TITLE:収納好きの日本人

 雑誌で「収納」の特集をすると、その雑誌は良く売れるそうだ。
 住宅・インテリア誌の編集長にそんな話を聞いたことがある。
  ある著名な収納アドバイザーが家を新築したというテレビ番組を見たことがある、玄関は収納を工夫して、なんと250足の靴を収納できるそうだ。250足の靴、、殆どマニアの世界だしだと思った。毎日履いても履ききれないほどの靴の数、これを果たして常時玄関に収納する意味が良く分からなかった。「でもこんなに沢山収納できるのよ!」と誇らしげだった。
 キッチンでも、収納にこだわるお客様はかなり多い。
 
 こんな事を書くときっと誤解されると思うけど、やたら沢山収納スペースを作りつけることが、使いやすい住宅やキッチンを設計することに繋がるとも思えない。昔からの諺で「人と場所はあればあるだけ」というのがある。収納スペースを増やすと、その増えたスペースに応じて物が増えていくという経験をしたことは誰もあると思う。
 ある女性の設計事務所の先生に以前こんな話を聞いたことがある。その設計事務所の先生は住宅やキッチンを設計するときには、必ずその家のあるものを全てリストアップして、大体2割程度の収納に余裕が出来るように収納設計をするそうだ。でも、新築してか、一年経過して再度その家にお邪魔して収納をチェックすると、もう入りきれない程の物で溢れていることが多いそうだ。
 現在のシステム・キッチンはもともとドイツから入ってきたものだと言われている。そして、そのドイツキッチンは、言い方を変えれば料理をする道具というよりは、「シンク付き収納家具」と言ったほうがいいと思われる代物だ。そのドイツキッチンへの憧れから来ている現在の日本のシステム・キッチンなのだから、キッチンのユーザーが「収納」にこだわりを持つのは致し方ないのかもしれない。
 でもそろそろ、日本の住宅やキッチンも、何でも沢山収納できればいいという発想から脱皮して、もっと自由に、ダイナミックに収納を考える時期にきてるのではないかと思う。