TITLE:サローネ 2008 最終回  キッチンに住む

 単なる料理をする道具としてのキッチンもいいけど、
 デザインのいいキッチンもいいけど、
 どうも私の好きなキッチンは、そのキッチンに思想とか,哲学を感じさせるキッチンが好きなような気がする。哲学というとちょっと大げさなのだけど、キッチンの作り手の明確な意思を感じられるというか、作り手の顔が見えるというか、そういう意味での哲学ですが、、
 ユーロクッチーナはBoffi的な超巨大キッチンのオンパレードだったという話は前回しましたね。どれだけ巨大かというと、キッチンだけの設置スペースで恐らく30畳はあろうという大きさで、これらダイニング・スペースやリビング・スペースを加えるとどれだけの広さがいるのかと想像すると、、、 溜息が出てきます。
 最初この巨大さは単なるプレゼンテーションかと思ってたのですが、いろいろ話を聞くと、実際にこの巨大なキッチンが販売されているようで、Boffiの業績も右肩上がりだそうです。このBoffiの好業績を受けて、他のキッチン・メーカーも競って超巨大キッチンのプレゼンテーションを始めたという事だと思います。
 この超巨大キッチンも当初はある意味ではBoffiのガバジー社長の意思のようなものが感じられて、かなり好感を持って眺めていました。Boffiも当初はここまで成功し,欧米のキッチン・メーカーにこれだけ影響を与えるとは思ってはいなかったのだと思います。でも、ここまでくると、ある意味では完全なサクセス・ストーリーになってしまったことで、Boffi自身もこのスタイルを継続せざる得なくなってきたような気がして、それを「Boffiの呪縛」という言葉を使って表現しました。
 誤解の無いように付け加えると、この言葉は私にとってはBoffiに対しての最大限の賛辞と思って下さい。パウロ・ボッフィーの時代から常にキッチン・デザインの最先端を走り、世界で最も影響を与え続けているBoffi、素晴らしい尊敬に値する企業だと思います。
 では、全てのキッチン・メーカーが超巨大キッチンを模索しているのかというと、そういう訳ではなく、、ここがいかにもイタリアらしいのですが、、いろいろな試みを感じさせる製品も多くはないのですが展示されていました。

 その中の一つがドムス・アカデミーがトルトーナ地区で展開していた、キッチンの新しいコンセプトの展示です。
 実は、この展示を見つけた時は、ちょっと背筋が寒くなったのですが、、
 どうして背筋が寒くなったのかというと、偶然にも私と同じ事を考えている人が世界にはいるものだということと、TOYO KITCHEN STYLE のキッチンの哲学が、世界の最先端のキッチン哲学と遂にシンクロしてしまったのではないかという思いでした。

 テーマは「 Inhabitable Kitchen
 つまり「キッチンに住む
 もうご存知とは思いますが、「キッチンに住む」は2008年度のTOYO KITCHEN STYLE の製品コンセプト・テーマです。
 このテーマ・ブースでの展示されていたキッチンは、「住む」という切り口からの新しいモジュール提案や、ちょっと面白かったのはキッチンの上がベッドになっているというのもあり、その発想の奔放さにかなり意表をつかせられました。

 長らく付合い頂いた「サローネ2008」のレポートですが、今回で最後になります。
 長い間お付き合い頂きありがとうございました。
 サローネも年々巨大になってきて、今では世界最大のインテリア・イベントと言っても過言ではないと思います。もともとバイヤーの為のトレード・ショーとして始まったと思うのですが、今では有名デザイナーの発表の場となり、また新人デザイナーの登龍門ともなり、また、出展企業も世界中に広がり、同時にインテリア産業以外からの出展やプレゼンテーションも多くなってきました。
 サローネの情報についても、今では日本中のメディアやウェブでかなり詳しく報道されるようになり、そんな背景から私のサローネ・レポートも内容は以前よりもっと独断と偏見色が打ち出せるようになってきましたので、フェエラやトルトーナの表舞台の情報よりも、少しマイナーでも面白いと思われた製品やイベントをフューチャーしたつもりです。
 内容については、いろいろ意見があるかと思いますが、まあ、、これも一つの見方だと考えて頂きご容赦願います。

追伸
 新製品「Meuble Carbon」の発表を5月29日に控えて、六本木のショールーム Meuble では準備に大わらわでした。夕方に現場をチェックしたのですが、ほぼ全ての製品は搬入され、梱包は外されて最後のセッティングに入ってました。ハイテク素材の Carbon Fiber と民俗アートの組み合わせのインテリアは、かなり面白い空間になりそうです。キッチンとインテリアの実験的空間としての六本木Meubleの面目躍如ですね。

 ぜひお越し下さい。

投稿者 nabe : 2008年05月27日 22:58