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【名作デザイン図鑑】トリノの反逆児たち、グフラムはいかにして家具を彫刻に変えたか|カクタス|Cactus

デザインや機能性に優れ、時代を超えて愛される名作家具や照明たち。実用品を超えて芸術作品としても評価されています。
数ある名作の中から今回は「カクタス|Cactus」をご紹介します。

カクタス|Cactus


デザイン:グイド・ドロッコ、フランコ・メッロ|イタリア
製造:グフラム|Gufram|イタリア・トリノ
1972年|コートハンガー

グイド・ドロッコとフランコ・メッロが刻んだ、ラディカルデザインの物語



実用のためのコートハンガーが、なぜ美術館に並ぶのでしょうか。グフラムの名作カクタスは、1972年のトリノで、機能とアートの境界そのものを問い直しました。半世紀を超えてなお色褪せない、その理由を読み解きます。

INDEX

  1. カクタスの誕生、コートハンガーという名の反逆
  2. トリノが生んだラディカルデザイン、その政治的背景
  3. 2,165の凹凸、グフラック塗装が守る手仕事
  4. 色を超えた普遍性、派生モデルが証明するもの
  5. まとめ
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カクタスの誕生、コートハンガーという名の反逆

カクタス|コートハンガー


1972年、グイド・ドロッコとフランコ・メッロは、玄関先の実用品であるコートハンガーに、砂漠の植物という異物を持ち込みました。四本の腕を広げるフォルムは、機能性一辺倒だったインテリアの常識に、意外性を突きつけます。実用性を保ちながらも、装飾的なオブジェとしての自律性を確かに獲得しています。



トリノが生んだラディカルデザイン、その政治的背景

カクタス|ラディカルデザイン


カクタスが生まれたのは、1968年の学生運動の熱気がまだ残るトリノでした。グフラムの周辺には、グルッポ・ストルムなど建築を学ぶ若者たちの集団があり、彼らの制作はデザインと政治、イタリア性という三つの軸の上に成り立っていました。労働争議の街であり、アルテ・ポーヴェラ(日常にある素材を用いた前衛美術運動)発祥の地でもあったトリノの空気は、のちのポストモダンへと接続されるラディカルデザインのユーモラスな抵抗精神として、カクタスに色濃く反映されています。


2,165の凹凸、グフラック塗装が守る手仕事

Guflac Paint
Guflac Paint


カクタスは、1972年当初と同じ型から柔軟なポリウレタンを成形し、2,165の凹凸を職人が一体ずつ手作業で仕上げます。表面を覆うのは、グフラム独自の特許塗料グフラックです。皮革のような質感と柔軟性を両立させながら、量産でありながら一体ごとに表情が異なる製法は、カクタス最大の差別化要素と言えるでしょう。

色を超えた普遍性、派生モデルが証明するもの

カクタス|さまざまなコートハンガー


初代カクタスが纏っていた緑は、サボテンを象る上でごく自然な色選びでした。むしろ特筆すべきは、そこから先の展開です。黒のネロカクタスや白のビアンコカクタス、赤のロッソカクタス、日焼けを思わせるメタカクタスなど、色を自在に変えながらも成立し続けてきたことは、カクタスの本質が色ではなく、四本の腕を広げた存在そのものにあることを証明しています。

Andy’s Cactus,The Andy Warhol Foundation,2022

Andy’s Cactus,The Andy Warhol Foundation,2022

Psychederic Cactus,Paul Smith,2017

Psychederic Cactus,Paul Smith,2017

アンディ・ウォーホル財団やポール・スミスとのコラボレーションが繰り返されてきたのも、この造形の普遍性ゆえです。

まとめ

Cactusrama Triennale,Milano,Italy,2022
Cactusrama Triennale,Milano,Italy,2022


グフラムのカクタスは、1972年にグイド・ドロッコとフランコ・メッロが生んだ、ラディカルデザインを象徴する一台です。色を変えながらも成立し続けてきたそのフォルムは、トリノの精神を、半世紀後の今に伝えています。

PopArtDesign,FoundationBeyeler,Basel,Switzerland,2022

所蔵されている美術館・展示歴
  • ミラノ・トリエンナーレ

  • 中国国家美術館(北京)

  • バービカン・センター(ロンドン)

  • スミソニアン・デザイン・ミュージアム(ニューヨーク)

  • リヴォリ城現代美術館(トリノ、2002年「The Rock Furniture」展)

  • リヴォリ城現代美術館(トリノ、2002年「The Rock Furniture」展)

  • バイエラー財団(バーゼル、2012年「Pop Art Design」展)
グフラムデザイナー|グイド・ドロッコとフランコ・メッロ

デザイナープロフィール


グイド・ドロッコとフランコ・メッロは、1968年の学生運動の熱気が残るトリノの建築学部に連なる世代の作り手です。グフラムは1966年、家具職人グリエルメット兄弟によってトリノで創業され、キャビネット製作や布張りの技術を土台にしながら、ポップアートやアルテ・ポーヴェラの影響を受けた若い作家たちの実験の受け皿となりました。ドロッコとメッロがカクタスに込めたのは、実用品への皮肉というより、境界を溶かす自由の感覚だったと言えるでしょう。

アナザーグリーンカクタス

アナザーグリーンカクタス

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