デザインや機能性に優れ、時代を超えて愛される名作家具や照明たち。実用品を超えて芸術作品としても評価されています。
数ある名作の中から今回は「カクタス|Cactus」をご紹介します。
INDEX
1972年、グイド・ドロッコとフランコ・メッロは、玄関先の実用品であるコートハンガーに、砂漠の植物という異物を持ち込みました。四本の腕を広げるフォルムは、機能性一辺倒だったインテリアの常識に、意外性を突きつけます。実用性を保ちながらも、装飾的なオブジェとしての自律性を確かに獲得しています。
カクタスが生まれたのは、1968年の学生運動の熱気がまだ残るトリノでした。グフラムの周辺には、グルッポ・ストルムなど建築を学ぶ若者たちの集団があり、彼らの制作はデザインと政治、イタリア性という三つの軸の上に成り立っていました。労働争議の街であり、アルテ・ポーヴェラ(日常にある素材を用いた前衛美術運動)発祥の地でもあったトリノの空気は、のちのポストモダンへと接続されるラディカルデザインのユーモラスな抵抗精神として、カクタスに色濃く反映されています。
カクタスは、1972年当初と同じ型から柔軟なポリウレタンを成形し、2,165の凹凸を職人が一体ずつ手作業で仕上げます。表面を覆うのは、グフラム独自の特許塗料グフラックです。皮革のような質感と柔軟性を両立させながら、量産でありながら一体ごとに表情が異なる製法は、カクタス最大の差別化要素と言えるでしょう。
初代カクタスが纏っていた緑は、サボテンを象る上でごく自然な色選びでした。むしろ特筆すべきは、そこから先の展開です。黒のネロカクタスや白のビアンコカクタス、赤のロッソカクタス、日焼けを思わせるメタカクタスなど、色を自在に変えながらも成立し続けてきたことは、カクタスの本質が色ではなく、四本の腕を広げた存在そのものにあることを証明しています。
アンディ・ウォーホル財団やポール・スミスとのコラボレーションが繰り返されてきたのも、この造形の普遍性ゆえです。
グフラムのカクタスは、1972年にグイド・ドロッコとフランコ・メッロが生んだ、ラディカルデザインを象徴する一台です。色を変えながらも成立し続けてきたそのフォルムは、トリノの精神を、半世紀後の今に伝えています。
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