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カルテルはミラノそのもの -ジャーナリストの見たカルテルストーリー Vol.3

革新的な技術、デザインで世界のインテリアシーンを牽引し続けるイタリアのブランド「カルテル」。
4年ぶりに通常開催されたミラノサローネでもカルテルは注目の的。
20年以上、世界のデザイン界を取材してきたジャーナリスト本間美紀さんがその哲学を3回にわたって読み解きます。

INDEX

  1. Kartell with Family Love|家族愛に支えられたブランドとして
  2. Welcome our home! |一夜だけデザイン界へ開かれる自宅の扉
  3. Kartell goes all of the world |世界に広がるカルテル
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Kartell with Family Love|家族愛に支えられたブランドとして

家族愛に支えられたブランドとして


カルテルを支えるルーティ家のファミリーは学ぶこと、語ることをやめない。

長男のフェデリコは全世界の販売の戦略を練り、長女のロレンツァはマーケティングやブランディングを担っている。

Kartell with Family Love|家族愛に支えられたブランドとして

たとえば「ミラノ土産として持ち帰れるカルテルを」―そんなアイディアの一例が見られるのは、ミラノきっての一流百貨店、リナシェンテの地下のカルテルコーナー。

世界中から集まる買い物客が、気軽に購入できる小さめのアイテムを中心に取り揃えた魅力的な店頭だ(もちろんアイコニックな家具もたくさんあるけれど)。これはフェデリコのビジネスアイディアと聞いている。

アメリカのマイアミなど、ダイナミックな土地では大きなカルテルショップを展開。


コントラクトビジネス、リテール、Eコマース、彼の頭の中にはさまざまなストラテジーが広がる。

ロレンツァもまたファッションのビジネスを経験して、カルテルに入社。彼女が関わるようになってから、カルテルのプロモーションビジュアルがぐっと今らしく洗練されたことに、私は気づいている。


そんな頼もしい3代目たちだが、以前、クラウディオとロレンツァにインタビューをした時のこと、彼女の経歴や目標を訪ねると、娘の発言に父のクラウディオがあれこれ口をはさみ、話が脱線してゆく。ちょっと膨れながらも苦笑するロレンツァ。

ダンディなルックスのクラウディオも、素顔はイタリア人らしいちょっとお節介なビッグパパ。有能な息子と娘を愛してやまない気持ちが、ビジネスの場でちらりと顔を覗かせる。イタリアらしい家族経営のブランドを感じる瞬間だ。

Welcome our home!

一夜だけデザイン界へ開かれる自宅の扉


そんな彼らはミラノの一等地にある自宅を、ミラノサローネの初日の夜に開放して、特別な招待客だけのホームパーティを開く。

Welcome our home!

モダンデザインと最新マテリアルで知られるカルテルだが、ルーティ家の自宅は驚くほど、クラシック。その中にさりげなくカルテル製品が使われている。メイン会場となる自宅のガーデンではカルテルのアウトドア家具やコードレス照明がゲストを迎える。

そこには、目を見張るような、世界のデザイン界の要人が集まってくる。あの人も、この人も! もちろんカルテルに関わるデザイナーが中心だが、アパレル関係や政治家などの要人も少なくない。ルーティ家がいかに社交界から信頼されているかを、いやおうなく知る夜宴だ。

Kartell goes all of the world

世界に広がるカルテル


カルテルのプロダクトはいつも、妥協なく開発され、イタリアのブランドの中ではインダストリアルでシャープな要素も強い。けれどもミラノで感じるのはカルテルのこういった人間味。私はそこに惹かれてやまない。

Kartell goes all of the world

またカルテルショップは世界に販路を広げており、各国のローカリティも反映しつつ、それでもアイディンティティを失うことはない。

どの街であってもブランドとしての品格を保つように、カルテル本社からの丁寧なディレクションが反映されている。


ミラノとは対照的な伝統の街・フィレンツェのカルテルショップはとてもシック。

中国・北京では特に透明性とモダンを強調したインダストリアルな店構え。

そしてもちろん、日本にだってカルテルはある。東京ストアは日本でのフラッグシップとして象徴的な存在だ。カルテルはいつでも手の届くところにある。


今回、カルテルについてコラムを書くにあたって、もう何十年も見てきたカルテルの取材記録を振り返ってみた。

プロダクト、製造方法、マテリアルの選択、デザイナーと築く関係性、ビジュアルやプロモーション、コミュニケーション。全方向からカルテルを見ていても、常にそこには発見がある。しかも80年近くもレベルを落とさない。

掘っても、掘り尽くせないカルテルの深さを改めて私は知る。
カルテルこそ、ミラノというモダンデザインの街の象徴なのだ。


一部の写真提供=Courtesy Salone del Mobile. Milano

取材・文=キッチン&インテリアジャーナリスト/本間美紀
Column by Miki Homma (Kitchen & Interior Journalist)

<プロフィール>
キッチン&インテリアジャーナリスト/本間美紀

早稲田大学第一文学部卒業後、インテリアの老舗専門誌「室内」の編集部に入社。独立後はインテリア、デザイン、キッチンを俯瞰した取材を続ける。著作に「リアルキッチン&インテリア」「人生を変えるインテリアキッチン」(いずれも小学館)など。ヨーロッパのインテリア、デザインの取材にも強く、イタリア・ミラノサローネ国際家具見本市、ドイツ・フランクフルトメッセなどの公式ジャーナリスト、海外ブランドの本社取材も多数。カルテルの取材は1990年代に始まる長年のカルテルウォッチャーでもある。2023年にはカルテルがメンバーでもある、イタリアブランドのラグジュアリー財団「アルタガンマ」の招待ジャーナリストとして選出される。

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