デザインや機能性に優れ、時代を超えて愛される名作家具や照明たち。実用品を超えて芸術作品としても評価されています。
数ある名作の中から今回は、光と影を織りなすカーペット「エデンクイーン」をご紹介します。
エデンクイーン|Eden Queen
デザイン:マルセル・ワンダース|Marcel Wanders|オランダ
製造:モーイ|moooi|オランダ
2015年|ラグ・カーペット
エデンクイーンは、オランダ黄金時代の巨匠たちから着想を得た花の絵画が施されています。デザイナーのマルセルワンダースは、レンブラントやフェルメールといった17世紀オランダ絵画の光と影の表現に深い敬意を抱いてきました。彼自身が手掛けた書籍『Rijks, Masters of the Golden Age』では、アムステルダム国立美術館の名画群を現代の視点で再解釈しています。
エデンクイーンの黒地に浮かび上がる色鮮やかな花々は、まさにその思想の結晶です。レンブラントが得意とした明暗法が、現代のカーペットデザインに昇華されています。円形のフォルムを縁取る黒いフレームは、絵画の額縁を想起させ、床面を美術館のギャラリーへと変貌させます。
moooiカーペットが採用するChromojetプリンターは76dpiという従来の5倍の解像度を実現し、フォトリアリスティックな表現を可能にしました。コンピューター制御されたインクジェットが正確な色調を測定し、染料を繊維に浸透させることで、絵画のような深みと立体感が生まれます。
この技術革新により、エデンクイーンの花弁一枚一枚に陰影が宿り、まるで17世紀の静物画が目の前に広がるかのような錯覚を与えます。従来のカーペット製造では不可能だった色彩の無限の組み合わせが、デジタル技術との融合によって実現しました。また、手織りのラグに比べて圧倒的に短納期での制作が可能になり、オーダーベースでの製造体制を確立しています。在庫を持たずに多様なデザインバリエーションを展開できることは、環境負荷の低減という側面でも意義深いです。
高精細プリント技術は、時間の経過とともに差別化が曖昧な領域となりつつあります。しかし、moooiカーペットが構築した真の優位性は、技術以上にアート作品の選択眼にあります。有名アーティストの作品や将来性のある現代アートをモチーフに採用する戦略は、単なる製造業者には到底真似できない文化的資本です。
インテリア空間において床や壁は最も大きな面積を占める要素です。そこに価値あるアート性を付与するという切り口は、従来の装飾概念を刷新する試みと言えます。エデンクイーンが体現するのは、「住空間をギャラリー化する」という新しい生活美学。この思想は、マルセルワンダース自身がアレッシィ、バカラ、フロス、ルイヴィトンといったグローバルブランドと築いてきた、芸術と商業の境界を超越する姿勢の延長線上にあるのです。
moooiカーペットが提案する最も革新的なコンセプトは、カーペットを床だけでなく壁面に飾るという発想です。ミラノサローネでの展示では、エデンクイーンを含む作品群がタペストリーのように空間を彩りました。この大胆なプレゼンテーション手法は、カーペットを「歩く」ものから「鑑賞する」ものへと再定義する試みと言えます。
φ250cmとφ350cmという大判サイズは、壁面に設置すれば圧倒的な存在感を放つ。モノクロームのバリエーションも用意され、モダンな空間にも調和する。正方形や長方形のフォーマットもあり、空間の用途や好みに応じて選択できる柔軟性があります。
エデンクイーンを取り入れる際は、その芸術性を最大限に引き立てる配慮が求められます。ミニマルな北欧スタイルのリビングに円形のエデンクイーンを配せば、空間のフォーカルポイントとなり、静謐な雰囲気に華やぎをもたらします。低パイルのポリアミド素材、ウールなど、素材の選択によって足触りと視覚効果が変化します。
壁面に飾る場合は、間接照明で花々を照らし出すことで、レンブラント絵画のような劇的な光の効果を演出できます。ギャラリーのような空間演出を目指すなら、他の装飾を極力排し、エデンクイーン単体を主役とする構成にするとよりアート性が引き立ちます。クラシカルな家具との組み合わせでは、過度な装飾を避け、カーペットの存在感を際立たせると上手く調和が取れるでしょう。
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