デザインや機能性に優れ、時代を超えて愛される名作家具や照明たち。実用品を超えて芸術作品としても評価されています。
数ある名作の中から今回は「スモークチェア|Smoke Chair」をご紹介します。
舞台は2002年6月、オランダのアイントホーフェン・デザインアカデミー。
マーティン・バース|Maarten Baasは卒業制作のため、古着市場やオンラインで調達したアンティーク家具にバーナーを当て始めました。
バロック様式の椅子が炎に包まれていく光景は、ショッキングであると同時に、どこか静けさをはらんでいます。燃え尽きる寸前の木材をクリアなエポキシ樹脂でコーティングし、構造を回復させます。
こうして生まれたのが「スモーク」シリーズです。
焦げた木の美しさを永久に封じ込めた、プロダクトでありアートでもある一連の作品といえます。
翌2003年、モーイ|moooiはこのシリーズを製品として採用しました。
ミラノサローネで世界に初披露され、デザイン界に鮮烈な印象を刻んでいます。
スモークチェアの核心は、その外観よりも、バースが投じた問い自体にあります。
「自然界では万物が時の流れとともに姿を変え、その時々で美しさを生み出します。
物事の美しい状態をそのまま保つのは非常に人間的な行為です。
スモークシリーズはその両方の美しさを新たに吹き込んだ作品です。」
製造工程は、明快でありながら詩情を帯びています。
スモークは、単なるプロダクトにとどまりません。
2004年、ニューヨークのMossギャラリーでの個展「Where There's Smoke」では、バースはリートフェルト、ガウディ、イームズ、ソットサスらのデザインクラシック約50点を燃やした作品を展示しました。
リートフェルトの「ジグザグチェア」は、25脚限定のエディションとして制作されています。
名作チェアが炎に包まれる光景。それはデザイン史への敬意であり、同時に挑戦でもあります。
この展覧会によりスモークは、プロダクトとアートの境界線を越え、現代デザイン史に固有の座標を占めることになりました。
ヴィクトリア&アルバート博物館(ロンドン)、グローニンゲン博物館(オランダ)、モントリオール美術館(カナダ)、メトロポリタン美術館(ニューヨーク)など、世界の主要美術館が永久コレクションとして所蔵しているのは、その証左といえるでしょう。
スモークチェアは、マーティン・バースが2002年の卒業制作を原点とする、モーイの代表的プロダクトです。
木製フレームを実際に燃やし、クリアなエポキシ樹脂でコーティングして機能を回復させる独自の製法により、一脚ずつ異なる表情を持つ一点物として完成します。
「自然の変容する美」と「人間が保存しようとする美」。その二つの問いを一脚に凝縮し、プロダクトとアートの境界に存在し続ける椅子です。
2003年のミラノサローネでデビューして以来、世界の主要美術館が所蔵するコレクターズピースとして、また日常空間に置かれる機能家具として、二つの顔を持ち続けています。
炎に刻まれた時間と哲学を生活の場に招き入れること。それがスモークチェアの、他に代えがたい価値です。
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