TITLE:Webから消えた3Dシンクについての記事

広島の松岡製作所の製品「3-Step Sink」がトーヨーキッチンの保有する3Dシンクの特許侵害に関しての裁判で、知的財産高等裁判所は株式会社松岡製作所に特許権侵害行為の差止めを命じたことはここでも以前に書かせてもらった通りです。
この件に関して日本のキッチン界の大御所とも言える黒田秀雄さんがネット上で記事を書かれていましたので見られた方も多いと思います。
黒田さんは以前から日本のキッチン業界のコピー体質に警鐘を鳴らしてみえたので、それがこんな記事になったと思います。
しかし、残念ながら諸般の事情もあって、この記事はネットから削除されてしまいました。
私としてはトーヨーキッチンが単に松岡製作所との裁判に勝訴したというたけでなく、これからの日本のキッチン業界を考える上で貴重な一文だと考え、黒田さんにお願いをして再掲載をさせて頂きます。
以下がネット上で書かれた黒田さんの記事です。
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キッチンデザインを尊重しよう!
トーヨーキッチンの特許権を侵害する商品の製造販売を差止める判決が確定!
トーヨーキッチンは、三十年近く前に「アーバンコア」というユニークなキッチンデザイ
ンを発表して以来業界での地位を固め、二十年前には、それまで麹町に あったショー
ルームを、青山学院大学横に移設して「ザ・スタジオ南青山」をオープンし「スピーガ」
を発表、その後も話題を集める商品開発とショールーム展開で、日本のシステムキッチン
業界に斬新なデザイン戦略を呼び込んだ。
そして一方では日本の狭小住宅の中でも、効率よいキッチン作業が実現するよう地道な研究を積み重ね、十数年前から2Dシンク、3Dシンク、4Dシンクと、 次々に新しいコンセプトのユニークなシンクデザインと斬新なキッチンデザインを続々と発表し続け、キッチン業界のデザインリーダーの地位を高めてきたこと はよく知られてきたことだ。
ところが、4~5年前からMO製作所というステンレスの加工メーカーが、最初はトーヨーキッチンの3Dシンクを精巧に模倣したシンクを製造販売し(この模倣品については裁判所で損害賠償が認められている)、その後、この3Dシンクの特徴を模倣したトーヨーキッチンの特許権を侵害するステンレスシンクを「3DMシンク」(後に「3ステップシンク」と変更)と名づけて低価格をウリに、オーダーキッチン業界に販売しはじめた。
トーヨーキッチンでは、当然のことながら、特許権侵害で提訴をおこない、類似品の製造販売を中止するよう強く申し入れてきた。これに対してMO製作所は、特許権侵害ではないと応訴した。
そのためここ数年、両者の提訴の行く末にかたずを呑んで見守りながらも、あろうことかオーダーキッチンメーカーや住宅設計を手がける建築家と称する一部のひとたちが、特許紛争の最中にある商品を“安いから”という理由で使ってきたのが実態だ。
中国製品にコピー商品が多いとあざけりながら指摘する日本人が、実際の現場では、こんなにふざけた状態を野放しにしていることは決して許されることではない。戦後の日本は、朝鮮動乱のおかげで復興を成し遂げたが、その頃登場した国産のチョコレートやチューインガムのデザインは、進駐軍のジープの後ろに群がって、チョコやガムを手にしていた子供の頃の私たちが不思議に思うほどそっくりで、味も香りもまったく違うモノが作られ始めたことが不可解でならなかった。
戦後の日本が、これで立ち直ったことは紛れもない事実だが、モノが豊かになり、日本人デザイナーや開発者の感性・技術力が世界的にも評価され、知的所有権のグローバルな意識が高ま
った今日、このような模倣・特許侵害は否定するべき時代にきていると思う。
 デザインの創造性の評価が、日々の仕事の中で決して高いばかりでないことに腹立たしく
思うことも多いが、デザイナー・開発者はクリエイティブの価値をもっと自信を持って高く尊重すべきである。
以下、トーヨーキッチン&リビング株式会社の公式サイトに掲載された、知的財産高等裁判所の判決確定に関する記事。
注記:相手の会社名は、著者の判断で英略字に変更しています。
「トーヨーキッチン&リビング株式会社(代表取締役社長 渡辺孝雄)は、株式会社MO製作所(広
島市)に対し、特許権侵害行為の差止め等を求めて2009年2月23日に東京地方裁判所に提訴し、その後、知的財産 高等裁判所及び最高裁判所において審理が行われておりましたが、2011年7月5日付けで最高裁判所が、株式会社MO製作所による上告を棄却するとともに 上告受理申立ても受理しない決定をし、知的財産高等裁判所が株式会社MO製作所に特許権侵害行為の差止めを命じた控訴審判決が確定しました。同判決は、株 式会社MO製作所によるシンク(商品名「3ステップシンク」)の製造販売等が弊社の特許権侵害であると明確に認定し、その侵害行為の差止め及び侵害品の 廃棄を株式会社MO製作所に命じています。」
私たちキッチンデザイナーは勿論のこと、キッチンスペシャリスト・インテリアデザイナー・インテリアコーディネータ・インテリアプランナー・建築設計家など創造的知的財産に関わる業務を手がけている人々は勿論のことキッチン業者・施工業者・住宅メーカー・ゼネコン・デベロッパーなどキッチンに関わる全ての人たちは、今回の知的財産高等裁判所の確定判決を真摯に受け止め、特許侵害品の蔓延に積極的に拒否の声を上げるべきである。
 
 またユーザーの方たちも、キッチンメーカーや建築設計家の意見を鵜呑みにするのでなく、みずから何が正しいのかを充分に理解してキッチン作りを楽しんでいただきたいと考える。
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投稿者 nabe : 2011年11月15日 17:20