TITLE:サローネ 2008 その4   デコは定着したのか? (2)

 前回でも書いたように、デコという言葉を今更使うのも恥ずかしいくらい、ミニマルの時代と比較すると、何らかの意味で装飾的な要素を持った製品が溢れています。インテリアに関しては、日本とイタリアのトレンドの時差は3年から5年なので、デコの傾向が顕著になり始めた4年前のサローネから逆算すると、もう日本でもいつミニマルからデコへの脱却が起こっても不思議ではないということになる。事実、その兆しは既に起こりつつある。

 写真はカルテルの樹脂製の椅子
 もともとグッド・デザインをもっと安価に提供する事で、多くの人にデザインを楽しんで欲しいという趣旨で発売された大量生産を前提としたプラスチック製の椅子だから、形状的にシンプルなものが多かったのですが、こういった装飾性の高い樹脂製の椅子も2年前のサローネから多くのメーカーから発表されていた。今年も、こういった傾向の樹脂製の椅子はカルテルばかりでなく、多くのメーカーから発売されていた。
 このカルテルだけど、4年前のサローネからこういった装飾性のある樹脂製の家具や照明を発表を続けている。今年はドルチェ&ガッバーナのランナウェーイでカルテルは樹脂製のシャンデリアまで発表してたが、会場は撮影禁止だったので写真で紹介する事は出来ないのが残念。かなり完成度は高く、ちょっと驚いた。
 TOYO KITCHEN STYLE でも、今年の3月にKilalaという樹脂製のシャンデリアを発表したので、ぜひショールームで見て欲しい。シャンデリアが普通の住宅に気軽に使用される時代になったいま、プラスチック製のシャンデリアはこれからかなり増えてくるような気がする。

 ザノッタの新作ソファー
 ザノッタも変わりつつあるけど、ここまでの製品を出してくるとは、ちょっと驚いたと同時に、今回のサローネでのお気に入りTOP10の一つだ。こういった意表を突くデザインがどうも好きかもしれない。

 デコの一つ流れに大きな影響を与え続けているメーカーは Edra社だ。今回、いろいろなメーカーから Edra の影響を受けていると思われる製品がかなり発表されていた。
 写真の椅子はあきらかにEdraMummySpongeに影響を受けていると思われる

 写真は吉岡徳人の新作ですが、やはりEdraの影響を大きく受けていると感じます。
 影響を受けたソファーはEdraRose ChairSushi だと思います。
 ちょっと誤解があるといけないので補足しますが、私は影響を受けることが悪いと言ってる訳ではありません。新しいデザインの流れは突然に何もない所から生まれるというものではなく、互いに影響され、刺激を受けながら、より高いレベルのデザインに昇華していくものだと思います。
 おまけに吉岡徳人は日本人のデザイナーの中で唯一アート的な感性を持ってるデザイナーだと思ってますし、私の大好きなデザイナーです。

 

 ではインテリアのトレンドに大きな影響を与えたEdra はどうなってきているのでしょうか?
 写真はフィエラのEdra ブースに展示されていた Getsuen です。色は、、なんとホワイト。
 デザインは先日 TOYO KITCHEN STYLE が発表した Ran のデザイナーでもある梅田正徳

 同じブースに展示されていた Rose Chair
 これもホワイト
 デザインは梅田正徳
 あのデコの旗手として世界の家具シーンに影響を与え続けて来た Edra がなぜホワイトなのかという点に注目してみました。ごく僅かではあるけど、デコの反動のような兆し、つまりもっとシンブルなものへの回帰とて見るのか、それとも、それとも単に家具マーケットの趣向の多様化に対応しているだけなのか?
 来年のサローネでの動きを注視していきたいと思います。

 それではイタリアのクラシック家具や、伝統的な装飾性の高い家具はどういう動きをしているのでしょう?
 フィエラでも伝統的な家具は別の建物の中にあり、モダン家具の建物と違って人の流れも閑散としている。こういった家具は一品、一品がハンドメイドで作られている物も多く、いいものはEdraも真っ青なほど高価なので、購入出来る層はかなり限られている。閑散としている事情はそんな理由なのかもしれない。
 写真はある意味ではコテコテともいえる家具。前述のようにこういった家具はオーダーメイドで一戸ずつデザインされ、制作されるので、家具だけではなく、壁面から、天井まで全てコーディネートされることが多い。それに、勿論目の玉が飛び出るくらい高い。
 余談になるけど、日本に入って来ているクラシック家具やインテリアは残念ながらかなりレベルの低いものか、量産型のものが多く、本物を見る事が少ないようです。
 こういった高価な伝統家具ですが、少し面白い動きをしているメーカーがあったので紹介します。

 メンディーニがクラシック家具のメーカーの為にデザインした椅子。
 どこから見てもメンディーニなんだけど、なんか妖しいし、なんか普通のメンディーニの作品と較べてかなり違った印象を感じた。同じクラシックなんだけど、彼の代表作「プルースト」ともかなり印象は違う。
 ファションで言うことに「外し」のインテリア版なのかもしれない。
 ちょっと欲しかったけど、日本では売る自信がなかったので諦めた。
 次回は「デコはどこに行くのか?」
 ご期待下さい

追伸です
 5月8日の梅田正徳さんの講演会、日本に於けるメンフィスの一人者であり、ソットサスが逝去した折も日本に於けるソットサスの窓口としてソットサス家から指名された方なのはご存知の通りです。
 彼独特の世界観からくるのだと思いますが、ちょっと日本のデザイナーとは切り口が違う彼の講演、私自身も大変に楽しみにしています。
 おかげさまで、早々と定員いっぱいとなってなってしまいました。
 彼の講演を楽しみにしている方は多いということだと思います。
 ついでと言っては何ですが、この講演会の時間を少し拝借して、私のサローネ報告もすることになりました。ブログだけではなく、生での報告なので、どこまで話が脱線するか分かりませんが、ブログには書けないような事も、ひょっとすると口を滑らせるかもしれませんのでご期待下さい、、??