TITLE:サローネ 2008 その6   アートとしての家具

 先日は六本木AXISで開催された RAN のデザイナーの梅田正徳さんの講演会に多数参加して頂いてありがとうございました。講演の中身は家具のデザインの変遷を時系列ではなく、スタイルの流れから説明したもので、こういった視点で家具の歴史を考えた事がなかったで、私としては久々に知的興奮を掻き立てられた講演でした。
 梅田さん、、本当にありがとうございました。
 梅田さんの講演の後、私の「サローネ報告」がありましたが、時間が少し少なかったので十分な説明が出来なかったようでしたので、この nabe forum をもう一度読んで頂けたら幸いです。
 講演の後、梅田さんを連れ出して、いま私が一番気に入っている南青山のイタリアン・レストラン「AWキッチン」で赤ワインを2本も開けて大騒ぎしてきました。
 さて、話を本題に戻します。
 今年のサローネでは、発表されたモダン家具の殆どが何らかの意味で装飾性が施されたものが主流で、日本ではまだ主流のシンプル & モダンと言われるミニマルなデザインはすっかり影を潜めています。でも、日本でもそろそろデコの流れは火がつき始めているようで、先日青山の家具ショップで、従来はどちらかというとシンブルで、土臭い家具を展示していた店でしたが、先日久々に見に行ったら、なんとシャンデリアだらけだし、家具そのものもかなりクラシックなテーストに変わってのには驚きました。
 世界的にはデコは定着してきました、次の問題は、ではこのデコの流れは今後どんな方向性を持って流れていくのかという点に注目していきたいと思います。
 デコは多様性であり、多様性というのは、個人の趣味や趣向、また、その人のライフスタイルさえも写す鏡であったりします。インテリアの傾向がデコである限り、ユーザーの求める空間の多様化へのニーズはさらに加速してくるのではないでしょうか。また、こう考えた時、インテリアを作る側としては、ユーザーのニーズをどの切り口で捕らえていくかは、かなり難しい問題だと考えています。

 多様性は、Edra やそれに影響を受けつつある Cappellini Morso のような形状の偶然性を形にするというものから、写真のソファーのようなアート的なグラフィック・パターンを施したものもまで、家具のアート的解釈をした製品が会場には溢れていた。

 アートと言っても、絵画や彫刻のようなものが家具なるという意味ではなく、大量に生産され、大量に消費されるものではなく、デザインやプロダクトのイメージとして、大量に消費されるイメージのないもの、つまり私も、隣の太郎さんも、横町の鈴木さんも持っているというイメージのあるものではなく、私だけが持っているるというイメージを持つもの、そういうものに対してのニーズが家具のアート的ニーズだと考えて下さい。
 写真は、インゴマウラーの照明、、とても大量に生産され、大量に消費されるとは思えないデザイン。

 アートというキーワードで、もう一つ大きなうねりになりつつあるのは、家具そのものを本当のアートと捕らえるという動きだ。これは、近年のマイアミ・アート・フェアーやバーゼル・アートフェアーの影響が大きいと思うのだけど、今回のサローネでは始めからアートと考える家具の展示がかなり増えていた。
 写真はメンデーニの収納家具、、どう考えても家具というより、空間オブジェと考えた方が分かりやすい。限定3台の生産で、価格は500万円。実は、買おうと思ったのだが、既に完売していて購入出来なかった。もし、購入出来たら、六本木Meubleか本社のキッチン・ミュージアムで見て頂く事が出来たのにと思うと、かなり残念。

 全体が鋳物の葉っぱで覆われたクローゼット。
 扉を開けると枯れ木を模した洋服掛けが中央に1台だけ、先ほどのメンディーニの収納家具と同じように、収納という意味では何の意味も無い。
 デザインはTORD BOONTJE(トード・ボーンチェ)
 限定生産、、僅か1台
 価格は、なんと7000万円
 価格もアート級、、、細工は精緻を極めている。

 金属で作られたソファー、、
 デザイナーはイスラエル人だそうだが、名前は忘れてしまった。

 シェルフ家具、、限定3台
 デザインは Andorea Branzi
 価格は聞き忘れたけど、やはりかなり高価だと思う。

 火星人のようにも見える、いまにも壊れそうな不思議なスツール

 家具を機能的な側面だけから捕らえるのではなく、空間を構成する一つの要素という側面で捕らえると、いろいろなデザインの可能性が出てる。家具は空間に置く事で、その置かれた空間のイメージをがらりと変えることが出来る。アートも、やはり同じような機能を持っている。一幅の絵画が空間の空気感を引き締める。家具もまたしかりかもしれない・・
 インテリアニーズの多様化と、デコの持つ多様性が重なるとき、家具はアート化するということかもしれない。
 次回は「エコのイメージ」
 ご期待下さい。
追伸
 今週号ののブルータスに nabe forum でも取り上げた、熊谷隆志さんの自宅が表紙になっています。スタイルに捕われない、新しいライフ・スタイルを実践している熊谷さんの自宅、何度見ても面白いです。殆ど完売状態らしいですが、もし書店に残ってたらぜひお買い求め下さい。

投稿者 nabe : 2008年05月11日 10:28