TITLE:シャネル モビル・アート展

 かなり話題になっているので、もうご存知の方は多いとは思いますが、CHANELモビル・アートといいう現代アートの展示会を東京で開催しています。この展示会に招待されて行ってきました。

 場所は代々木体育館内の空き地に巨大な白い可動式のドームを建設し、その中でシャネルのキルティング・バッグからインスピレーションを得た20組のアーティストの作品が展示されています。ドームのデザインはザハ・ハリド、、いかにもザハらしい有機的な曲線で構成された白いドームで、可動式だそうで、香港を皮切りに世界中を巡回するという話だ。世界を廻り終わるのはには二年の歳月をかけるらしい。

 このドームの中に展示してあるのは現代アートと呼ばれる作品なのですが、普通の展覧会とちがってサウンド・ウォークという音声ガイドに導かれて,白い迷路のような空間をさまよい歩くというもので、その音声のイメージかジャンヌ・モローということで、流れる音楽と合わせると、まさに「不思議のラビリンス」の疑似体験のようだ。
 写真は最初の作品で、透明なアクリルの結晶が空間に浮かんでいる。周囲は花模様のモザイクタイル。椅子があり、座りながら空間を見つめる。

 次の作品を見るには階段を登る。階段の先には穴があり、その中を覗くと不思議なモノクロの深海風景のような映像の世界。作家は日本人の女性アーティスト束芋(たばいも)。ここでもその穴をひたすら覗きながら彼女の世界に埋没していく。

 空間に空の段ボール箱が散乱している。中を覗くと、箱の底には映像が流れている。まるで中に不思議な小宇宙が広がっているような錯覚に陥る。流れている映像は白い床に裸の女性が動いている。そのうちの一人はかなり太っているのだけど、その女性の存在が何か映像から現実感を奪っている。

 ミラーが張り巡らされた曲線で構成された部屋の中央には一見泡のようなアクリルの塔がそびえている。泡の塔の先端には捨て去られたようなものが吹き出している。

 TATOOが入った豚皮で作られたシャネルのバッグ。
 このバッグの両サイドには、これまたTATOOの入った二匹の豚の剥製が控えていた。かなり不思議な雰囲気がこのバッグから漂っている。
 TATOOモチーフというのは、個人的にはかなり面白いと思った。ちょっと前に、坂井直樹さんがTATOOのTシャツを作って発売し、かなりヒットしたのを思い出した。日経デザインで彼と対談した時、「あのTシャツは復刻されないのですか?」ってきいたら、その予定はないそうでがっかりした。

 巨大なシャネルのバッグ。写っているのは一部で、バッグの開口部の高さは人間の背ぐらいはある。中にはコンパクトが置いてあり、さのコンパクトのミラーの部分がディスプレーになっていて、不思議な光景が映し出されていた。

 モビルアート展を見終わると、そのドームの出口で軽くお酒とフードが出てきて、暫し展覧会の感想などを話しながら懇談をした。ちょうど雨も上がって、ドームを吹き抜ける風が心地良かった。

 現代アートというのは、旧来のアートという考え方の垣根を大きく通り越してしまって、あらゆるもの,アートとして感覚的に捕らえられる表現が全てアートという範疇で語られるようになってきた。アンディー・ウォホールの時代には「POPアートは果たしてアートなのか?」という議論もあったらしいが、現代アートはそんな議論さえしている暇はないほど多様な展開を見せ始めている。
 有名なパリのカルチェ美術館では、この現代アートだけを展示している美術館で、ここを訪れると旧来のアートという概念を根本からひっくり返してくれる。前述の束芋の作品を始めて見たのはこのカルチェ美術館だし、ここで行われたゴルチェの「パンのアート」という展示も見たが、「パンさえもアートなのか!!」と腰を抜かした。美術館の地下で焼いたゴルチェのパンの作品を一階で展示をするというもの。ちょっと笑えたのは、この時にパンを焼いてた職人の作業着がゴルチェのデザインしたものだった。作業着がゴルチェのオートクチュールって、、なんて贅沢なんでしょう!!
 このモビル・アート展、完全予約制だそうだが、聞いてる限りはもう東京での予約は満杯らしく、もし見たいと思われた方は次の開催地に行くしか仕方がないそうだ。それと、確認した訳ではないけど,ヤフーオークションで出品されているという話を小耳に挟んだ。