TITLE:サローネ2010 その2 全体の印象

 それではいよいよサローネの本題に入ります。
 まず、、全体の印象というのは元気がない、、ともかく世界的な不況の影響だとは思いますが、サローネ全体のメーカーとしての活気が以前よりかなり低く感じました。
 今年はキッチンの年なのに、どのメーカーも発表は自社のショールームかフィエラのブースだけで、特設会場を発表の場を持っているメーカーは皆無だった。
 メーカーが駄目なら、デザイナーや建築家個人はということで、ここはむしろ今まで以上に活気があった。
 この傾向が続くと、サローネは商売の場ではなく、むしろ作家やデザイナーの発表の場と化してしまうのでないかと思う程です。そうなると、本来のサローネの意義はまったく変わってくる訳で、、でも、、まあ、そんな事はあり得ないとは思いますけど。
 2つ目の印象は、やたら中国人が目立っていた。会場でも中国語が飛び交い、中国の現在の勢いを象徴するかのようでした。 
 でも、サローネ全体の入場者は7%増えたそうだけど、これって殆ど中国人っていうことかもしれない。ともかく、中国人ばかりでした。

 まずアート家具の話です。
 世界同時不況の影響だと思いますが、メーカーはどうしても売れ筋を中心の新製品が多くて、刺激を受ける事が少なかったのが残念です。まあ、中にはエドラやエスタブリッシュ&サンやバルビエトーゾのようなパワーが溢れた新製品を発表してくれたメーカーもありましたけど・・ まあ、この話はまた後ほど。
 上の写真は椅子を樹脂で固めたもので、韓国のデザイナーの作品です。デザイナーの名前は忘れました。ともかく、椅子としての機能を放棄した製品で、まさにアート家具の典型ですね。椅子が氷詰めになった製品もありましたが、同じ作家のものかは不明です。
 前述で書いたようにメーカーが元気がない分、こういったデザイナーの発表の場が増えてきていて、ドローグのような動きを見せ始めたデザイナーも目につきました。つまり、メーカーが新製品に対して臆病になった事で、発表の場をなくしたデザイナーが自分で出資者を募り、自分で製品化を図る、、まあそんな動きですね。

 次に全体の製品トレンドですが、家具のアート化というトレンドは別の切り口ですから、ちょっと横に置いておいて、メーカーとしてどんなトレンドを意識した製品があったかという話をしたいと思います。

 トレンドは名古屋のコンランショップの講演で話したように大きく分けて3っつに分類出来ると思いました。
 1) デコラティブ (カラーも含みます)
 2) スローライフ (キーワードは自然、ロハス)
 3)  インターカルチャアル (異文化との融合とでも訳しますか)
 それでは、順番にその代表的と思われる製品を紹介しながら文を進めます。

 最初は「デコラティブ」
 ご存知ガエターノ・ペッシェ
 メーカーはメリタリア
 このソファー、メリタリアのショールームの外の路上に展示してありました。
 ちょっとグロテスクだけど、さすがペッシェ、、カラフルでデコラティブ
 ペッシェはこの他にもトリエンナーレの広い会場での発表もありました。
 他にも、カラフルな家具で有名なカリム・ラシッドもいろいろなメーカーから新製品を発表してましたし、当社が扱っているモザイクのメーカーSICIS社から驚くようカラフルで有機的なデザインの家具の発表もありました。
 デコはまだまだ健在だと思いました。

 次に紹介するトレンドは「スローライフ」
 沢尻エリカとの離婚問題で騒がれている高城剛も最近出版した本のテーマはやはり「スローライフ」
 日本でもソトコトという雑誌が数年前から売れ始めているとか、ともかく「スローライフ」が世界の生活スタイルのトレンドになってきているのご存知の通り。
 デザインやインテリアの世界でも5年くらい前からこの傾向の兆しがあり、今年のサローネではトレンドの爆発とも思われるような状態になりつつあります。
 写真はスローライフデザインの寵児ピート・ヘイン・イークの収納家具
 価格は聞かなかったけど、かなり高価なものだと思う。
 このスローライフを日本の市場で考える時に一番のハードルが価格だと思う。
 こういったエイジング加工というのはとても高価なものだけでど、日本人のインテリアの価値観の中にこういったデザインがとても高価なものだという認識は現在ではないと思う。
 日本でこういった製品が普及するのには、日本人の価値観が変わった時がポイントなのではと思いながら、実は今月末の新製品のテーマは「スローライフ」、展示は今月末から東京、名古屋、大阪の各ショールームに設置する予定なので、ぜひ興味がある方はお出かけ下さい。
 東京のショールームにはフランスはプロバンスの本格的なエイジング加工を施したキッチンも展示する予定なのでご期待下さい。

 最後はインターカルチュアル、、異文化を融合させた感のデザイン。
 マルセルワンダーズやパトリシア・ウルキォラがそれだと思う。
 この傾向に具体的なネーミングが与えられ始めたのは最近だと、トレンドとしての歴史は結構長いと思う。
 写真は偶然見つけたエスニックな張布のソファー、ちょっとウルキオラ風ということも言えるけど、メーカー名は不明
 デザイナーがデザインをゼロから創造するかというと、そういう訳ではなく、何かを見てインスパイァーされたというケースが多いというか、大半ではないかと思う。
 そういう意味から、まだ見た事のないもの、見た事がない文化、見た事がないデザインという事になると、異文化の接点から見いだす事があるというのは自然だと思う。イブサンローランのデザインがモロッコのマラケシに居を構える事で花開いたという事ととか、ピカソの絵とそっくりな顔をアフリカの原住民の絵に見つけたとか、、そういう事だと思う。
 今後、デザインに関しての情報が瞬時に世界を駆け巡る時代になった現代、まだ見ぬ辺境のアートからインスパイァーされるデザイナーは今後も増えてくるものと思う。
 さて、、総論のイントロダクションはこのくらいにして、次回からメーカー毎の各論に入ります。