TITLE:サローネ2010 その14 マーティン・バース

 量産家具については一部の家具メーカーを除いて、やはり世界的な景気の流れを受けてか、どちらかというとあまり冒険をしないような、ある意味では売れ筋を見過ぎているというような感も受けました。
 反面、当初から大量販売を考えないようなアート的な家具については、相変わらず元気でした。
 最近私もこういった少量生産を前提とした家具の方に興味が移りつつあり、サローネでもうこの種の家具を見る時間を多く割くようになってきました。考えてみれば、わがトーヨーキッチンも最初から大量販売を指向してないという点で共通なものを感じてはいます。
 今日はその中でも最近特に興味があるマーティン・バース(Maaten Baas)を取り上げたいと思います。日本ではもう既にシボネが販売をしているので日本でも好きな方は増えて来ているのではないかと思います。
 マーティン・バース(Maaten Baas)1978年にドイツで生まれ、オランダの「デザイン・アカデミー・アイントホーフェン」を卒業という経歴です
 彼を有名にしたのは「スモーク」と称する家具シリーズで、実際に家具を燃やしたものをフィニッシュして完成させるという、極めてユニークな手法で製作された作品です。

 実際に燃やしたテーブルです。
 燃やし加減によって形状に偶然性を持たせるという意味から、ある意味でモダンアート的な考えた方に通じるものがある作品です。
 テーブルの手前の部分は焼き過ぎて穴が開いてしまい、その穴から釘が飛び出しています。
 家具を機能的な側面から考えると、こんな穴の空いたテーブルはあり得ないということになりますが、空間を飾るオブジェという側面で家具を捉えると、こういった家具も存在してしまうのです。

 燃やし方が違うと、ベースは同じでもこの2脚の椅子のように、フォルムがまるで違った製品が出来上がってしまいます。
 でも、形状が微妙に違う2つの椅子を並べておいても、違和感は感じないばかりか、少しアンビバレンツな魅力も感じてしまう私です。

 スモークされた鏡です

 名作「カールトン」もマーティン・バースにかかるとこんなことになってしまいます。

 実際にマッキントッシュのヒルハウスを燃やしている画像を見つけました。
 「ほんとに燃やしてるんだぁ」と、正直思いました
 右は燃やして製作された完成品です

 マーチンバースの家具はこの「スモーク・シリーズ」とは別に「スクルプトというシリーズも有名です。
 写真はその「スクルプト・シリーズ」の収納家具。
 左右が非対称というばかりでなく、全体に妙に歪んだようなフォルムも印象的です。
 ラフスケッチをそのまま形にしたという事らしいです。

 同じく「スクラプト・シリーズ」の机と椅子です。

 今回トーヨーキッチンが取り扱う事になった「エスタブリッシュト & サンズ」のラインアップのなかにもこのマーティン・バースの椅子があります。