TITLE:サローネ 2008 最終回  キッチンに住む

 単なる料理をする道具としてのキッチンもいいけど、
 デザインのいいキッチンもいいけど、
 どうも私の好きなキッチンは、そのキッチンに思想とか,哲学を感じさせるキッチンが好きなような気がする。哲学というとちょっと大げさなのだけど、キッチンの作り手の明確な意思を感じられるというか、作り手の顔が見えるというか、そういう意味での哲学ですが、、
 ユーロクッチーナはBoffi的な超巨大キッチンのオンパレードだったという話は前回しましたね。どれだけ巨大かというと、キッチンだけの設置スペースで恐らく30畳はあろうという大きさで、これらダイニング・スペースやリビング・スペースを加えるとどれだけの広さがいるのかと想像すると、、、 溜息が出てきます。
 最初この巨大さは単なるプレゼンテーションかと思ってたのですが、いろいろ話を聞くと、実際にこの巨大なキッチンが販売されているようで、Boffiの業績も右肩上がりだそうです。このBoffiの好業績を受けて、他のキッチン・メーカーも競って超巨大キッチンのプレゼンテーションを始めたという事だと思います。
 この超巨大キッチンも当初はある意味ではBoffiのガバジー社長の意思のようなものが感じられて、かなり好感を持って眺めていました。Boffiも当初はここまで成功し,欧米のキッチン・メーカーにこれだけ影響を与えるとは思ってはいなかったのだと思います。でも、ここまでくると、ある意味では完全なサクセス・ストーリーになってしまったことで、Boffi自身もこのスタイルを継続せざる得なくなってきたような気がして、それを「Boffiの呪縛」という言葉を使って表現しました。
 誤解の無いように付け加えると、この言葉は私にとってはBoffiに対しての最大限の賛辞と思って下さい。パウロ・ボッフィーの時代から常にキッチン・デザインの最先端を走り、世界で最も影響を与え続けているBoffi、素晴らしい尊敬に値する企業だと思います。
 では、全てのキッチン・メーカーが超巨大キッチンを模索しているのかというと、そういう訳ではなく、、ここがいかにもイタリアらしいのですが、、いろいろな試みを感じさせる製品も多くはないのですが展示されていました。

 その中の一つがドムス・アカデミーがトルトーナ地区で展開していた、キッチンの新しいコンセプトの展示です。
 実は、この展示を見つけた時は、ちょっと背筋が寒くなったのですが、、
 どうして背筋が寒くなったのかというと、偶然にも私と同じ事を考えている人が世界にはいるものだということと、TOYO KITCHEN STYLE のキッチンの哲学が、世界の最先端のキッチン哲学と遂にシンクロしてしまったのではないかという思いでした。

 テーマは「 Inhabitable Kitchen
 つまり「キッチンに住む
 もうご存知とは思いますが、「キッチンに住む」は2008年度のTOYO KITCHEN STYLE の製品コンセプト・テーマです。
 このテーマ・ブースでの展示されていたキッチンは、「住む」という切り口からの新しいモジュール提案や、ちょっと面白かったのはキッチンの上がベッドになっているというのもあり、その発想の奔放さにかなり意表をつかせられました。

 長らく付合い頂いた「サローネ2008」のレポートですが、今回で最後になります。
 長い間お付き合い頂きありがとうございました。
 サローネも年々巨大になってきて、今では世界最大のインテリア・イベントと言っても過言ではないと思います。もともとバイヤーの為のトレード・ショーとして始まったと思うのですが、今では有名デザイナーの発表の場となり、また新人デザイナーの登龍門ともなり、また、出展企業も世界中に広がり、同時にインテリア産業以外からの出展やプレゼンテーションも多くなってきました。
 サローネの情報についても、今では日本中のメディアやウェブでかなり詳しく報道されるようになり、そんな背景から私のサローネ・レポートも内容は以前よりもっと独断と偏見色が打ち出せるようになってきましたので、フェエラやトルトーナの表舞台の情報よりも、少しマイナーでも面白いと思われた製品やイベントをフューチャーしたつもりです。
 内容については、いろいろ意見があるかと思いますが、まあ、、これも一つの見方だと考えて頂きご容赦願います。

追伸
 新製品「Meuble Carbon」の発表を5月29日に控えて、六本木のショールーム Meuble では準備に大わらわでした。夕方に現場をチェックしたのですが、ほぼ全ての製品は搬入され、梱包は外されて最後のセッティングに入ってました。ハイテク素材の Carbon Fiber と民俗アートの組み合わせのインテリアは、かなり面白い空間になりそうです。キッチンとインテリアの実験的空間としての六本木Meubleの面目躍如ですね。

 ぜひお越し下さい。

TITLE:サローネ 2008 その9  キッチン、、Boffiの呪縛

 サローネでは併設の展示会として二年に一度キッチンの展示会がある。
 「ユーロクッチーナ」と呼ばれるのかそれで、年々規模が大きくなってくると同時に、イタリア以外のキッチン・メーカーの展示も増えてきて、世界最大のキッチン展になってきた。
 全体の印象としては、やはり突出しているのが Boffi 社だと思う。

 特に Boffi が6年前に発表をした超巨大キッンの流れが、ここにきて全てのキッチンメーカーに大きな影響を与えているようで、そのせいかフィエラのメイン会場で展示されているキッチンは、殆どが Boffi 的な超巨大キッチンの流れを汲んでいた。
 実は今回のユーロクッチーナでは、その本家ともいえる Boffi がどんな新しいコンセブトを携えてくるのか、楽しみにしていたのだけど、特に新しいコンセプトの提案はなかった。
 これはひょっとして「Boffiの呪縛」かもしれない・・とか思った。
 Boffi も日本では苦戦しているようだけど、世界的には絶好調らしく、巨大キッチンの需要は大きいようで、Boffiとしては新しい切り口の提案の必要がないということなのだと思う。
 写真は市内の特設会場でのBofffiの展示

 キッチンは相変わらずの超巨大キッチンで新鮮味はなかったけど、プレゼンテーションはかなり面白かった。プレゼンテーションのイメージは「エコ」だと思う。廃材を思わせる荒削りの巨大なカウンターテーブルとか、最初の写真のフードに張られた少しプリミティブなイメージのタイル。
 やはりここでも「エコ」というのが世界のインテリア・デザインの一つの大きな流れになっていることが良く分かる。

 Boffiとはまるで違った切り口で面白かったのはご存知、石のキッチンで衝撃的な minotti cucine 。写真を見ても分かると思うけど、扉、天板、シンクは全て石で出来ている。驚くのは収納の大きな扉まで表面は石を薄く切って貼ってある。いくら薄くても、そこは石なのでキッチンはは恐らくとんでもなく重いと思う。

 シンク部分のアップ、、美しい。
 2年前のユーロクッチーナで展示された石のminotti cucineはかなり仕上げも荒削りだったが、今年のモデルはかなり洗練されてきて,精度も良く、驚いた。
 このminotti cucineは今回はフィエラでの展示は無く、新しく出来たミラノの中心街のシールームでの発表だった。場所はドーモの近くで、広さもかなりあり、勢いのあるメーカーだと感じた。
 しかし、ある意味ではここまで造形的に割り切ったキッチンを購入する層があるマーケットは羨ましいと思った。どうしてもキッチンは住宅設備機器であり、デザインは単なる付加価値の一つだとしか捕らえることしか出来ない日本のマッケートとは対極に感じた。

 今回のユーロクッチーナでもう一つ特徴的だったのは、電動の扉が溢れていたということだ。いわゆる引き出しのサーボシステムも、日本では対応しているのは TOYO KITCHEN と他一社だけなのだが、今回出展のヨーロッパのキチンメーカーは漏れなく、このサーボシステムを使用していた。サーボのメカも、日本ではblum だけなのだが、GRASS Hettich からも発売されているようで、今後他の日本のキッチン・メーカーも対応を始めるだろうと思います。
 さて、次回は「サローネ 2008 その10  キッチンに住む
 ご期待下さい

追伸
 いよいよ、来週の木曜日、5月29日から六本木Meuble でカーボンファイバーの扉を使ったキッチンを発表します。そのプレゼンテーションに合わせるインテリアはアジア・アフリカの民俗アートです。かなり実験的な試みですが、面白いものになると思いますので、ぜひご来場下さい。
 展示する民俗アート家具の紹介が Meuble オフィシャル・プログ「Meuble Voice」で始まってますのでぜひご覧下さい

 

追伸 その2
 今月6月号の「NIKKEI DESIGN」の 74ページにコンセプターの坂井直樹さんとの対談が掲載されています。TOYO KITCHEN STYLE というブランドの中で、私が何を考え,何をしようとしているのか、聞き手の坂井さんが素晴らしいので、かなりうまくまとめて頂きました。ぜひご覧下さい。
 

TITLE:サローネ 2008 その8  弾けるスピーガ通

 インテリアも好きだけど、フアッションの世界も大好きだ。
 ついでに、フィギュアーやコミックも大好きな私ですが、、そのフィギュア趣味が嵩じてメディコム・トイの赤司社長との対談を Openers というウェプ・マガジンに掲載中という話は前回しましたが、、その続編が公開されています。
 
 会談の中で、ついつい赤司さんの誘導尋問にかかって、喋ってしまったのですが、趣味の延長というか、、フアッションのビジネスを少しだけ参入するとこになりました。
 詳細はOpenersで → ここ 
 スピーガ通りといえば、ミラノの中心街にある有名ブティックが立ち並ぶ通りで有名。エルメスブルガリドルチェ&カッバーナの店舗もこの通り沿いにある。

 以前からインテリアとファションの関係というのは指摘されてきたように、いつの頃からかサローネの開催時期にになるとミラノ市内の有名ブティク店舗のウィンドウ・ディスブレーもインテリアを意識したものが増えてきている。
 今年も、やはりそういったウィンドウ・ディスプレーを施した店舗が沢山あったので、その中の一部を紹介しようと思います。
 左の写真はカルテルの蛍光色のスタンド・ランプの色彩に合わせてコーディネートされたディスプレー。

 スタルクの透明なプラスチックの椅子に白いレースを被せたディスプレー。椅子のバックにディスプレーされた白いドレスが印象的ですね。

 ディスプレーで家具を絡めるのは良く見たのですが、今年はユーロルーチェの年でもないのに、何故か私が見たとこもないような照明器具を絡めたディスプレーがかなりありました。ひょっとして私が知らないだけで、かなり有名な照明器具かもしれないので、もし知ってる方が見えたらコメント下さい。
 写真は火星人のような三本の金属製の足を持った、少しアールデコの臭いがする照明器具。
ショップはロベルト・カバーリ

 同じくロベルト・カバーリのディスプレー。
 海に漂うクラゲのようなイメージの照明器具
 椅子は、なんとなくロッキード・チェアーのイメージでもある。
 余談だけど、最近ロベルト・カバーリがブランドごと売却するという話が進んでいるようだ。オファーされた金額は2200億円、、カバーリ側の金額は3200億円ということで、かなりまだ開きがあるという話だ。でも、何れにしても凄い金額が飛び交うものだと、かなり驚いてしまった。ロベルト・カバーリ年間の売り上げはどれだれかは知らないけど、すざましいブランドの付加価値だと思った。

 同じくロベルト・カバーリ
 これは一体なんと形容していいのだろうか?
 連想したのは「未知との遭遇」でのワンシーン、草原の一軒家に宇宙船の母船が現れる時の上空を覆う不気味な雲の動きだった。ともかく、これはデザインというのか、なんというのか、見ているとちょっと消化不良になりそうだった。

 無数のクリスタル・ガラスで装飾された有機的な形状を持つシャンデリア。
 ロベルト・カバーリの弟ブランドのジャスト・カバーリのウィンドウ・ディスプレー

 スピーガ通りに面した建物の中庭にあった、ルアーの竿を使った照明器具。
 竿の先にぶら下がっている袋には、白熱灯がいっぱい張っていて、その中の一つが光っているという仕掛け。ちょと意表を突きませんか??

 インテリアデザインのトレンドはファションから始まると思っています。
 私は、これからのインテリアの方向性を考えるとき、必ずファションの動きを参考にします。タイムラグはトレンドが日本に到達するまでには10年くらいかかっているような気がします。イタリアだと5年ぐらいかもしれません。
 まず、ファションで始まり、店舗デザインに行き、そして最後に住宅のインテリアに行くという、まあそんな流れでだと思ってます。
 さて、次回は「キッチン、、Boffiの呪縛」です
 ご期待下さい

追伸
 5月29日から六本木Meubleで新製品「Meuble Carbon」を発表します。
 この製品は扉に炭素繊維を張り込み、それをポリエステル塗装で塗り込めた美しい製品です。限定で10セットのみの販売となります。
 六本木のショールーム 六本木Meuble はキッチンを家具と位置づけ、キッチンとインテリアの可能性を実感して頂く為のショールームです。今回の新製品「Meuble Carbon」には、アジア・アフリカン・フォーク・アートの家具と装飾品を空間に配した中でのプレゼンテーションです。
 インテリアとしてはあまり見ない切り口なので、かなり面白い独特な空間になると思いますので、ぜひご期待下さい。
 事前の知識として、どんな家具や、装飾品がが展示されるのか、Meuble のオフィシャル・ブログで公開が始まりました。
 是非、ご覧下さい → ここ

TITLE:サローネ 2008 その7  エコのイメージ

 エコなデザインと言っても、プロダクトそのものがエコという意味ではない。
 デザインのイメージがエコであるプロダクトという意味で、このイメージがコンセプトだと思われる製品が今回のサローネでかなり見受けられた。

 左の写真はシュレッダーからゴミとして排出された紙を固めたイメージのスツール。シュレッダーから偶然に出たゴミを固めても、こんなカラリングにはならないと思うので、使う紙の色はかなり計算されているものと思う。でも、イメージとして捨てられたものを再利用しているというデザインのイメージは感じられる。

 酷使されて、ボコボコになってしまった金属の缶をイメージしてデザインされたランプシェード。本当に捨てられた缶を集めて、塗装して、製品にしている訳ではなく、これも捨てられた物を再利用しているというイメージのプロダクト。
 こうやってエコのイメージのプロダクトを良く考えてみると、本質的には省資源でも何でもないので、エコのイメージをデザインとして取り上げた製品という事になり、これもやはりプロダクトの装飾、つまりデコの一つの方向性だと考えるとこが出来ると思います。
 また、使用され、捨てられたイメージというのは、形状の偶然性というイメージに繋がり、同じものがないということになると、アートのような希少性というイメージに重なってくるのではないかと考えます。
 

 上の写真は足の部分が水没して、塗装が剥げてしまったというイメージのテーブルと椅子。これも、やはり捨てられてしまったものの美しさをもう一度見直して再利用するというデザイン。エコ・デザインもこういった切り口もある。

 ご存知 Piet Hein Eek (ピート・ヘイン・イーク)
 今回のサローネでの市内ギャラリーで、彼の作品を一同に見たが、1990年の前半からこういったエコのイメージの製品を作り続けているのを始めて知った。カンパーナ兄弟Edraから発売した廃材の椅子を見た時はかなりショックだったが、それより遥か前からこういった廃材のイメージの家具をデザインしてたとは、、凄いと思った。今なら私も理解出来るが、今から15年前に彼の作品見て評価出来たとか自問自答すると、まず無理だと思った。

 同じくPiet Hein Eekの廃材のイメージの椅子。
 前述の廃材のイメージのテーブルと組み合わせたイメージを想像して下さい。恐らくは殆どの人は評価しないし、高価であるという認識をする人も少ないと思う。
 でも、今回のサローネでのエコのイメージのデザインをしたプロダクトがれだけ増えてきているを見ると、5年先にはひょっとして一般の認知も上がり、これが高価なものに見える時代が来るかもしれないし、もし来たら凄い事だと思った。
 Piet Hein Eekのデザインはエッジである限り、単なる一つの方向性ほ示しているだけだけど、これが一般的に受け入れられるマーケットが誕生してくるとしたら、これは一種のデザインのパラダイム・シフトであり、革命になるのかもしれない、、そう思ったら、少し背筋が寒くなってきた。
 さて、、次回は「弾けるスピーガ通り」です
 ご期待下さい

追伸
 Openers というWeb Magazine で BE@RBRICK で有名なメディコム・トイの社長と私が対談をしてます。その対談を通して、メディコム・トイとのコラボレーションが実現しました。
 詳しくはここ  Openers

TITLE:サローネ 2008 その6   アートとしての家具

 先日は六本木AXISで開催された RAN のデザイナーの梅田正徳さんの講演会に多数参加して頂いてありがとうございました。講演の中身は家具のデザインの変遷を時系列ではなく、スタイルの流れから説明したもので、こういった視点で家具の歴史を考えた事がなかったで、私としては久々に知的興奮を掻き立てられた講演でした。
 梅田さん、、本当にありがとうございました。
 梅田さんの講演の後、私の「サローネ報告」がありましたが、時間が少し少なかったので十分な説明が出来なかったようでしたので、この nabe forum をもう一度読んで頂けたら幸いです。
 講演の後、梅田さんを連れ出して、いま私が一番気に入っている南青山のイタリアン・レストラン「AWキッチン」で赤ワインを2本も開けて大騒ぎしてきました。
 さて、話を本題に戻します。
 今年のサローネでは、発表されたモダン家具の殆どが何らかの意味で装飾性が施されたものが主流で、日本ではまだ主流のシンプル & モダンと言われるミニマルなデザインはすっかり影を潜めています。でも、日本でもそろそろデコの流れは火がつき始めているようで、先日青山の家具ショップで、従来はどちらかというとシンブルで、土臭い家具を展示していた店でしたが、先日久々に見に行ったら、なんとシャンデリアだらけだし、家具そのものもかなりクラシックなテーストに変わってのには驚きました。
 世界的にはデコは定着してきました、次の問題は、ではこのデコの流れは今後どんな方向性を持って流れていくのかという点に注目していきたいと思います。
 デコは多様性であり、多様性というのは、個人の趣味や趣向、また、その人のライフスタイルさえも写す鏡であったりします。インテリアの傾向がデコである限り、ユーザーの求める空間の多様化へのニーズはさらに加速してくるのではないでしょうか。また、こう考えた時、インテリアを作る側としては、ユーザーのニーズをどの切り口で捕らえていくかは、かなり難しい問題だと考えています。

 多様性は、Edra やそれに影響を受けつつある Cappellini Morso のような形状の偶然性を形にするというものから、写真のソファーのようなアート的なグラフィック・パターンを施したものもまで、家具のアート的解釈をした製品が会場には溢れていた。

 アートと言っても、絵画や彫刻のようなものが家具なるという意味ではなく、大量に生産され、大量に消費されるものではなく、デザインやプロダクトのイメージとして、大量に消費されるイメージのないもの、つまり私も、隣の太郎さんも、横町の鈴木さんも持っているというイメージのあるものではなく、私だけが持っているるというイメージを持つもの、そういうものに対してのニーズが家具のアート的ニーズだと考えて下さい。
 写真は、インゴマウラーの照明、、とても大量に生産され、大量に消費されるとは思えないデザイン。

 アートというキーワードで、もう一つ大きなうねりになりつつあるのは、家具そのものを本当のアートと捕らえるという動きだ。これは、近年のマイアミ・アート・フェアーやバーゼル・アートフェアーの影響が大きいと思うのだけど、今回のサローネでは始めからアートと考える家具の展示がかなり増えていた。
 写真はメンデーニの収納家具、、どう考えても家具というより、空間オブジェと考えた方が分かりやすい。限定3台の生産で、価格は500万円。実は、買おうと思ったのだが、既に完売していて購入出来なかった。もし、購入出来たら、六本木Meubleか本社のキッチン・ミュージアムで見て頂く事が出来たのにと思うと、かなり残念。

 全体が鋳物の葉っぱで覆われたクローゼット。
 扉を開けると枯れ木を模した洋服掛けが中央に1台だけ、先ほどのメンディーニの収納家具と同じように、収納という意味では何の意味も無い。
 デザインはTORD BOONTJE(トード・ボーンチェ)
 限定生産、、僅か1台
 価格は、なんと7000万円
 価格もアート級、、、細工は精緻を極めている。

 金属で作られたソファー、、
 デザイナーはイスラエル人だそうだが、名前は忘れてしまった。

 シェルフ家具、、限定3台
 デザインは Andorea Branzi
 価格は聞き忘れたけど、やはりかなり高価だと思う。

 火星人のようにも見える、いまにも壊れそうな不思議なスツール

 家具を機能的な側面だけから捕らえるのではなく、空間を構成する一つの要素という側面で捕らえると、いろいろなデザインの可能性が出てる。家具は空間に置く事で、その置かれた空間のイメージをがらりと変えることが出来る。アートも、やはり同じような機能を持っている。一幅の絵画が空間の空気感を引き締める。家具もまたしかりかもしれない・・
 インテリアニーズの多様化と、デコの持つ多様性が重なるとき、家具はアート化するということかもしれない。
 次回は「エコのイメージ」
 ご期待下さい。
追伸
 今週号ののブルータスに nabe forum でも取り上げた、熊谷隆志さんの自宅が表紙になっています。スタイルに捕われない、新しいライフ・スタイルを実践している熊谷さんの自宅、何度見ても面白いです。殆ど完売状態らしいですが、もし書店に残ってたらぜひお買い求め下さい。

TITLE:サローネ 2008 その5  デコはどこに行くのか?

 サローネの楽しみは仕事だけでなく、勿論美味しい食べ物、そして勿論のこと、美味しいワイン。イタリアのワインはフランスのワインより使う葡萄の種類が多いと言われるが、一番多いのはサンジョベーゼという葡萄らしい。有名なトスカーナ地方のワイン、キャンティーはこのサンジョベーゼ種を使って作られた代表的なワイン。

 でも、最近は伝統的なイタリア・ワインの手法を使わない美味しいワインも出現している。これらのワインは伝統的な製法を使っていないというだけで格付けが無く、基本的には安価なテーブルワインと同じ格付けなのだが、とんでもなく高価で美味しいのがある。この種のワインはスーパータスカンと呼ばれて、中には入手が難しいのもあるという話だ。SASSICAIAというのワインがスーパータスカンの中ではかなり有名だという話だ。
 まあ、このあたりのワインの知識は、ワイン好きの友人からの受け売りなので、もし間違いがあれば訂正して欲しい。
 ちょっと余談になるけど、この友人、以前の趣味は真空管集めという不思議な趣味の持ち主で、秋葉原がまだ電気街だったころ、付合って行くと、なんか路地のジャンク家みたいなところに潜り込んで出てこなくなってしまい、、、  まあ、、そんな話はいいか。
 でも、5,6年前から突然にワインの収集が趣味になり、現在の彼のコレクションは下手なフレンチ・レストランよりは余程充実していると思う。
 写真のワインは今回のイタリア出張で一番美味しかったワイン、、どんなワインかは知らないけど、ピノ・ノワールのような味がした。香り高く、飲み心地がすっきりしているが、かなり味わいは深い。

 話を元に戻そう。
 今日のテーマは「デコはどこに行くのか?」という話。
 インテリアのトレンドは完全にデコ、、デコという言葉を今更使うのが恥ずかしいほど、殆どの新作家具が何らかの装飾性を持ったものになってきていた。
 まさに、ミニマルは忘却の彼方に去ってしまったようだ。
 デザインのトレンドの話をすると、日本では違和感を持つひとがいる。
 デザインとトレンドは馴染まないという意見だ。曰く、いいデザインは不滅で、デザインは消費されるべきではないという人もいる。まあ、それはもちろんそうだが、やはりデザインにも旬があり、旬があるということは、やはり時代とうものを考慮に入れてデザインを論じないといけないというのが私の持論だ。つまり、デザインにもトレンドがあるということだ。

 デコの時代は当分は続くと思われるが、問題はこの先、このデコの方向はどのベクトルに向かっているのだろうか、、そして、その行き着く先は??
 ベクトルの1つは アート だと思う。
 そしてベクトルの2つ目は エコ だと思う。

 デコというのは、多種多様な方向性があり、、可能性がある、、と、、いう意味から考えると、個人の多様な価値観や美的感覚がそのままデザインに反映出来るということになる。つまり、ミニマルと違って、デザインによって、他と差別化が出来るということになると、プロダクトがミニマルように如何にも量産出来るデザインよりも、より量産に適してないデザインの方が好むという傾向が生まれて来ている。
 つまり、それは家具のアート化
 量産されるプロダクトへの嫌悪感というものかもしれない。
 この量産されているものへの嫌悪感は、そのまま2つ目のベクトルのエコに通じるものがあると思う。エコ的なデザインというのは、廃棄されたものを再利用するという意味があり、廃棄されたという事は使用済みということになるから、形状的な偶然性というものがデザインのベースにあると思う。
 デコには、まだいろいろなベクトルがあるかもしれないが、今回のサローネで私が強く感じたのはこの2つだった。
 では、、次回は「アートとしての家具」というテーマです。
 ご期待下さい。
追伸
 最近、復刻版というのが流行っているが、家具以外でもちょっと面白いものが復刻された

 左は、ご存知、ソットサスがオリベッティーの為にデザインした携帯用のタイプライター「バレンタイン」
 右の写真はBrion-Vegaのステレオ、、復刻されていたのは知らなかったがCDを入れる口か゜あったで復刻されたのだと思う。
 こういった昔の工業製品はなんか暖かい感じがして好きだ

TITLE:サローネ 2008 その4   デコは定着したのか? (2)

 前回でも書いたように、デコという言葉を今更使うのも恥ずかしいくらい、ミニマルの時代と比較すると、何らかの意味で装飾的な要素を持った製品が溢れています。インテリアに関しては、日本とイタリアのトレンドの時差は3年から5年なので、デコの傾向が顕著になり始めた4年前のサローネから逆算すると、もう日本でもいつミニマルからデコへの脱却が起こっても不思議ではないということになる。事実、その兆しは既に起こりつつある。

 写真はカルテルの樹脂製の椅子
 もともとグッド・デザインをもっと安価に提供する事で、多くの人にデザインを楽しんで欲しいという趣旨で発売された大量生産を前提としたプラスチック製の椅子だから、形状的にシンプルなものが多かったのですが、こういった装飾性の高い樹脂製の椅子も2年前のサローネから多くのメーカーから発表されていた。今年も、こういった傾向の樹脂製の椅子はカルテルばかりでなく、多くのメーカーから発売されていた。
 このカルテルだけど、4年前のサローネからこういった装飾性のある樹脂製の家具や照明を発表を続けている。今年はドルチェ&ガッバーナのランナウェーイでカルテルは樹脂製のシャンデリアまで発表してたが、会場は撮影禁止だったので写真で紹介する事は出来ないのが残念。かなり完成度は高く、ちょっと驚いた。
 TOYO KITCHEN STYLE でも、今年の3月にKilalaという樹脂製のシャンデリアを発表したので、ぜひショールームで見て欲しい。シャンデリアが普通の住宅に気軽に使用される時代になったいま、プラスチック製のシャンデリアはこれからかなり増えてくるような気がする。

 ザノッタの新作ソファー
 ザノッタも変わりつつあるけど、ここまでの製品を出してくるとは、ちょっと驚いたと同時に、今回のサローネでのお気に入りTOP10の一つだ。こういった意表を突くデザインがどうも好きかもしれない。

 デコの一つ流れに大きな影響を与え続けているメーカーは Edra社だ。今回、いろいろなメーカーから Edra の影響を受けていると思われる製品がかなり発表されていた。
 写真の椅子はあきらかにEdraMummySpongeに影響を受けていると思われる

 写真は吉岡徳人の新作ですが、やはりEdraの影響を大きく受けていると感じます。
 影響を受けたソファーはEdraRose ChairSushi だと思います。
 ちょっと誤解があるといけないので補足しますが、私は影響を受けることが悪いと言ってる訳ではありません。新しいデザインの流れは突然に何もない所から生まれるというものではなく、互いに影響され、刺激を受けながら、より高いレベルのデザインに昇華していくものだと思います。
 おまけに吉岡徳人は日本人のデザイナーの中で唯一アート的な感性を持ってるデザイナーだと思ってますし、私の大好きなデザイナーです。

 

 ではインテリアのトレンドに大きな影響を与えたEdra はどうなってきているのでしょうか?
 写真はフィエラのEdra ブースに展示されていた Getsuen です。色は、、なんとホワイト。
 デザインは先日 TOYO KITCHEN STYLE が発表した Ran のデザイナーでもある梅田正徳

 同じブースに展示されていた Rose Chair
 これもホワイト
 デザインは梅田正徳
 あのデコの旗手として世界の家具シーンに影響を与え続けて来た Edra がなぜホワイトなのかという点に注目してみました。ごく僅かではあるけど、デコの反動のような兆し、つまりもっとシンブルなものへの回帰とて見るのか、それとも、それとも単に家具マーケットの趣向の多様化に対応しているだけなのか?
 来年のサローネでの動きを注視していきたいと思います。

 それではイタリアのクラシック家具や、伝統的な装飾性の高い家具はどういう動きをしているのでしょう?
 フィエラでも伝統的な家具は別の建物の中にあり、モダン家具の建物と違って人の流れも閑散としている。こういった家具は一品、一品がハンドメイドで作られている物も多く、いいものはEdraも真っ青なほど高価なので、購入出来る層はかなり限られている。閑散としている事情はそんな理由なのかもしれない。
 写真はある意味ではコテコテともいえる家具。前述のようにこういった家具はオーダーメイドで一戸ずつデザインされ、制作されるので、家具だけではなく、壁面から、天井まで全てコーディネートされることが多い。それに、勿論目の玉が飛び出るくらい高い。
 余談になるけど、日本に入って来ているクラシック家具やインテリアは残念ながらかなりレベルの低いものか、量産型のものが多く、本物を見る事が少ないようです。
 こういった高価な伝統家具ですが、少し面白い動きをしているメーカーがあったので紹介します。

 メンディーニがクラシック家具のメーカーの為にデザインした椅子。
 どこから見てもメンディーニなんだけど、なんか妖しいし、なんか普通のメンディーニの作品と較べてかなり違った印象を感じた。同じクラシックなんだけど、彼の代表作「プルースト」ともかなり印象は違う。
 ファションで言うことに「外し」のインテリア版なのかもしれない。
 ちょっと欲しかったけど、日本では売る自信がなかったので諦めた。
 次回は「デコはどこに行くのか?」
 ご期待下さい

追伸です
 5月8日の梅田正徳さんの講演会、日本に於けるメンフィスの一人者であり、ソットサスが逝去した折も日本に於けるソットサスの窓口としてソットサス家から指名された方なのはご存知の通りです。
 彼独特の世界観からくるのだと思いますが、ちょっと日本のデザイナーとは切り口が違う彼の講演、私自身も大変に楽しみにしています。
 おかげさまで、早々と定員いっぱいとなってなってしまいました。
 彼の講演を楽しみにしている方は多いということだと思います。
 ついでと言っては何ですが、この講演会の時間を少し拝借して、私のサローネ報告もすることになりました。ブログだけではなく、生での報告なので、どこまで話が脱線するか分かりませんが、ブログには書けないような事も、ひょっとすると口を滑らせるかもしれませんのでご期待下さい、、??

TITLE:サローネ 2008 その3  デコは定着したのか?? (1)

 サローネも年々巨大化してきている。
 今年は35万人の参加者があったそうで、去年に較べて27%のアップらしい。
 事実、会場でも、トルトーナ地区でも、あまりの人出に少し恐怖感さえ憶えた。
 私の場合はミラノ事務所から会場に送迎して貰ったので、行き帰りはそんなに大変ではなかったけど、自費参加した社員の話を聞くと、地下鉄は凄い事になっていたらしい。
 まさに世界のインテリアの祭典と呼んでいいのかもしれない。
 どうしてこんなに巨大化したのかということだけど、一つはサローネが単なる商談の場だけではなく、企業のイメージ・アップの為のブレゼンテーションの場となってきている点だと思う。日本でもTOYOTAを筆頭にインテリアとは関係のない業種が会場を持ったり、また、インテリア関係でも、直接に欧米市場に販売するという意味ではなく、母国に向かってのプレゼンテーションの場として活用するという会社、例えば日本ではPanasonicのプレゼンテーションもそういう意味だそうだ。
 もう一つは、「サローネのウィンブルドン化現象」と呼んでもいいのかもしれないが、展示企業やデザイナーの多国籍化というのがますます顕著になってきた。フィエラでも、トルトーナでも、かなりのイタリア以外の企業の展示スペースが増えていた。
 デザイナーの多国籍化はもっと顕著で、イタリア以外のデザイナーがますます幅を利かせて来て、イタリア人のデザイナーはますます影が薄くなりつある。大御所と呼ばれる人たちも、先般のソットサスの逝去のように、過去にイタリアデザインの牽引車だった人たちが次々とこの世を去りつつあるという背景もあるのかもしれない。
 こんなバックグラウンドからだと思うけど、イタリア以外からのサローネの参加者が大きく伸びているようです。日本人もかなり増えているような気がする。
 さて、、本題の「デコは定着したのか?」に入ることにします。
 まず、、結論から、、ですが。
 「デコの流れ」は完全に定着したようで、今更デコという言葉を使うのが気恥ずかしい程なのと、もう既にこのデコのアンチテーゼとも言える動きの兆しさえ見えたのには驚きました。

 写真はご存知ヤコブセン、、でも、、とてもカラフル。
 10コルソコモで開催されていた「ヤコブセン展」
 あの、、永遠の名作、ヤコブセンさえもこんなにデコラティブになると、まるで違った印象になる。

 展示の中で私が一番気に入ったヤコブセン。
 アメリカ国旗をイメージさせる。
 余談になるけど、最近ギャルソンがイギリス国旗をモチーフにしたTシャツを出したり、ルシアン・ペラフィネがイギリス国旗とスカルを組み合わせたT-シャツとセーターを出したりしたせいもあるかもしれないけど、ちょっと国旗モチーフにはまってしまった。

 ネオン照明がついた椅子とミラー
 家具と照明の一体化という考えは、かなり面白いと思った。
 この家具、Boffiの特設会場に見たので単なるインスタレーションだと思ってたら、実際に販売されている家具だった。こんなのが製品として販売する世界を舞台に活躍する家具メーカーは本当に怖い。

 あのカッシーナも変わってきた。
 カッシーナというメーカーはかなり時代感を持つたメーカーだと思うので、その時のインテリアの流れが成熟しつつある時期を見計らって、早過ぎもせず、遅過ぎもせず、絶妙のタイミングで製品化する会社だと思っている。まるで、TOYOTA のようだ。
 そんな会社がこんな家具を出して来た。
 いよいよデコ本番という事だと思う。

 最後に私の大好きなEdraの新作。
 ソファーのは張布が妙にぬめり感を持った光沢のある布で、かなりアジアン・アフリカン・テーストを意識したのかもしれない。
 余談だけど、、今年のHermesのキャンペーン・テーマはインド。
 今、全国のエルメス・ショップに行くとカラフルに着色された可愛い象で溢れている。アジア・アフリカン・テーストというのがひょっしてデコの一つの可能性なのかもしれない。

 実は、そんな事は前々から思っていて、5月の六本木ムーブルで発表する新製品には、アジアやアフリカのフォーク・アートをキッチンを中心としたインテリアの中で見て頂くという実験的な試みをする予定だ。どんな事になるのか、私も想像はつかないが、とんでもない空間になるかもしれない。
 次は「デコは定着したのか?? その2」の予定です。
 ご期待下さい

TITLE:サローネ 2008 その2  YCAMI編

 サローネから帰ってから、何かとバタバタしてしまって、サローネ・レポートも少し遅れ気味で申し訳ないです。その代わりと言っては何ですが、5月8日の梅田さんの講演会の場を少し拝借して、私のサローネ・レポートをライブで聞いてもらう事にしました。
 今年のサローネに関しての私の 独断と偏見 を生で聞いてみたいと思われる方、まだ席は若干残っているようですので、ぜひHPから参加をお申し込み下さい。サローネやユーロクッチーナについて、いろいろな見方を知りたいと思われている方、きっと面白いと思います。
 →講演会の情報はここ

 さて、それではまず TOYO KITCHEN STYLE が日本の総代理店を努めている YCAMI 社の新製品から紹介しますね。

 今年の新製品の中で、一番の話題はアルミに鏡面仕上げを施した椅子です。
 アルミの鏡面というのは、メッキとかとは違って、質感が不思議にレトロっぽくなります。独特の風合いはこれから日本でも本格的に始まってくるインテリアのデコの流れの中で,独特のアクセントを与えてくれるような気がします。
 全体がアルミだけで出来ているので、ガーデン・ファニチャーとしても使用できます。
 アルミの座面が横方向ではなく,縦方向に流れているので、極めて座り心地はいいのに驚きます。この椅子は私自身もかなり気に入ったので秋以降には日本で見て頂けるように発注しました。ご期待下さい。

 同じタイプのスツール
 写真のツールは白塗装ですが、私は鏡面の方が好きだったので、日本に持ってくるのはスツールも鏡面仕上げです。

 昨年発表してセンセーショナルな話題となった「ORIGAMI」のローテーブルです。
 ご存知のようにこの ORIGAMI は橋梁で使われるトラス構造を椅子に使った,極めて建築的要素の強い椅子です。非常に印象的なフォルムで、空間に置いてトップライトで照らすと、椅子の影と一緒になって空間のイメージをがらりと変えます。極めて軽いのも特徴です。
 このORIGAMI のテーブルは秋には日本にお目見えするので、椅子とセットするとかなり面白い空間になるのではないかと、今から楽しみにしています。

 ミラーの新製品。
 縦長の細身で美しい。
 ミラーですが、欧米ではインテリアのなかでかなり多用されていますが、日本では極めて稀です。このせいか,日本で紹介されているミラーのバリエーションは極めて少なく、雑誌等でも紹介されることもあまりないようです。ミラーを使ったインテリア空間は今回の CORE のプレゼンテーションでも使われてますので、ぜひ注意してみて下さい。
 TOYO KITCHEN STYLE では、もっとインテリアにミラーを使って頂こうと何年も前から,積極的に欧米のミラーを日本で紹介を続けていますし、今後とも継続していろいろなデザインのミラーを日本市場に紹介を続けていきたいと考えています。
 ちょっと余談になりますが、今回の新製品COREで使われているミラーの中で一番のお気に入りは KIRAKIRA ビアンコのプレゼンテーションで使われている ICE(アイス)とネーミングされた、氷のように見えるフレームを持ったミラーです。 ミラーICE は東京、名古屋、大阪、福岡の各ショールームで現物をご覧頂けます。
 写真の YCAMI のミラーはプロトタイプで、まだ製品化するかどうかは不明だそうですが、もし生産入るようでしたら,日本で紹介するつもりです。
 次回のサローネ 2008 は、「デコは定着したのか?」です。
 ご期待下さい

TITLE:サローネ 2008 その1   サローネ前夜

 パリ経由でミラノに着いた時は、もう夜になってた。

 食事を軽くしてからホテルの近くの コルソコモ を通りかかると、11時を過ぎてるにも関わらず、まだ沢山の人が行き来していた。バールでは、あつこちで一晩中でも続くのではと思ってしまうイタリア人のお喋りが続いていた。相変わらずお洒落で楽しいコルソコモなんだけど、新しいお店もかなり入っていた。

 街角にひっそりと立つ街の占い師
 喧噪のコルソコモを離れると、ミラノの街は突然静寂の闇に包まれてくる。
 賑やかなミラノも好きだけど、静寂の闇に溶け込むミラノの街の方が好きかもしれない。
 暗闇に溶け込む街はどれだけ歩いても飽きる事はない。

 闇と静寂の底に沈むミラノの街を歩いていると、突然現れた白熱灯に照らされた住宅の扉。こんな扉一つで感動させてくれる不思議な街だ。歩いていると、こういいった街の切り取られた風景が次々と現れて来て、飽きる事はない。

 もうサローネに来るようになって何年経つのだろう。
 今年はどんなサローネになるのだろう。
 年々サローネは巨大化し、ショー化しつつある中で、見る方も余程気をつけて見ていないと、華やかな部分にだけ目を奪われ、サローネの本質を見誤ってしまうような気もする。
 今年のサローネで私が特に気をつけて見ていきたいと思っているのは、まず、5年程前から始まって来たデコの流れがどれだけ定着を始めて来たのかという点。それと、そのデコの流れはこれからどこに行くのだろう?という2つの点。この2つを重点的に見ていこうと思った。
 もう一つ、最近の日本のサローネ・ブームということもあると思うのだけど、事前情報も含めて、サローネに関しての情報はかなりインターネットを通して発信されている。この情報の洪水の中で、私のブログが通り一辺倒の情報だけを改めて発信する必要があるのだろうかという疑問がある。
 もっと、独断と偏見、あまり報道されないサローネの片隅での展示、、まあ、どうなるかは分からないけど、一般的には報道されないと思われるサローネの側面の話や、サローネの底辺で起こっている出来事を中心にまとめてみようと思ってるのだけど・・
 余談になるけど、これだけ日本でサローネの事前情報が溢れているなか、肝心のインテルニのサローネ・ページがサローネ前日にしかオープンしなかったという、いかにもイタリア的なエピソードから話を始めようと思います。

 写真はコルソコモでみかけた チンクェチェント、、アーティトは不明